温泉MaaSアイデアソンの進め方(2)

前回に引き続き、温泉MaaSアイデアソンの進め方について紹介していきたいと思います。今回は、アイデアソンの具体的な進め方になります。

アイデアソンのスケジュール

アイデアソンでは少なくとも3時間程度の時間が必要です。対象とする課題テーマにもよりますが、半日〜1日程度で実施することが多いのではないかと思います。

温泉MaaSアイデアソンでは、午前9時から12時までの3時間の開催としました。3時間の内訳は、視野を広げるための知る時間を1時間、グループに分かれてアイデアを出し合う時間を1時間、グループ発表と講評・表彰などを1時間として設定しました。

グループ分け

少ない人数でアイデアソンを行う場合にはグループ分けは必要ありません。一方で、10人以上となる場合はグループ分けを行った方が望ましいと考えます。温泉MaaSアイデアソンでは30名の参加者がいたことから1グループ6名で5グループを作りました。グループの分け方は適切な方法を選んでもらうのが良いと思います。ここでは以下の3つの方法について紹介しておきます。

    1. 事務局でグループテーマを決めて、グループメンバーを決める
    2. 事務局でグループテーマを決めて、参加者一人ひとりがグループを選ぶ
    3. 参加者のアイデアをグループテーマとして、参加者一人ひとりがグループを選ぶ

方法1は、温泉MaaSアイデアソンでも採用した方法です。ある程度、参加者の素性が明らかで、またアイデアソンの方向性をグループメンバーによってある程度コントロールしたい場合に適しています。

方法2は、参加者の素性が不特定な方が参加される場合や、参加者の意思を尊重したい場合に使います。懸念点としては人気のないグループテーマが出てくる可能性があります。その場合は人数調整などが必要となります。

方法3は、グループテーマも事務局では決めずに参加者からの意見を取り入れる方法です。公募制のアイデアソンではよくこの方法が用いられます。このときは、全体の課題テーマに対して、個人のアイデアをあらかじめ書いてきてもらいます。アイデアソンの冒頭で、個人発表を行い、発表されたテーマを参加者全員で投票等で選び、それをグループテーマにします。懸念点としては、どの程度のアイデアがあらかじめ集まるのかわからないことと、事務局がすくなからず意図しているアイデアソンの方向性に合致するか必ずしも分からないということです。


ペルソナの設定

ある課題テーマに対してアイデアソンでアイデアを出し合うときに、ある程度同じ方向を見定めて話し合うほうがより深い議論ができます。そこで、アイデアソンではグループ分けを行い、グループごとに観点を変えて話してもらうことで、重複した議論をなるべく少なくすることも期待できます。この観点は、アイデアソンでは「なぜ」に着目することが重要であることから、課題を持っている当事者(=ユーザー)とすることが一般的です。このユーザーのことを「ペルソナ(Persona)」と言います。ペルソナとはもともと心理学の用語で、マーケティングという概念において「架空のユーザー像・人物モデル」のことを称する言葉として使われ、アイデアソンなどでは「課題テーマにおける商品やサービスを使用する架空の人物像」として使われています。

    • 温泉MaaSアイデアソンでは以下のペルソナを設定しました。
    • ワーケーションで訪れてくる方(公共交通機関を利用する)
    • 来訪する観光客(自家用車を利用する)
    • 地域で仕事をしている方(自動車を利用する)
    • 地域で生活されている方(自動車を利用する)
    • 地域で生活されている方(自動車を利用しない)

ユーザーシナリオの深掘り

ここからグループに分かれてアイデアを出す話し合いをします。最初に、与えられたペルソナに応じて、その人に起こる出来事(行動内容、場所)を考えてみます。付箋紙に思いついたものを書き込み、以下のような用紙に貼り付けていきます。このときなるべく具体的な行動内容、場所などを書き込みます。

ユーザーシナリオごとの課題の抽出

つぎに出来事に対して、困りごとを書き出します。同じように付箋紙になるべく具体的に書いて貼り付けていきます。困りごとは出来事に対して複数あっても構いません。グループ内で同じような意見が出ていても、どんどん自分の意見を出していきます。同じような意見があるということはその意見に賛同者が多いということになります。試験ではないので、書き出しながらグループ内で内容を確認したり、隣の人が書いたものを参考にして、自分の意見を見出しても良いです。とにかくたくさん出すことが重要です。

シナリオごとの課題解決サービス検討

つぎに書き出された困りごとに対して、解決案を考えます。同じように付箋紙になるべく具体的に書いて貼り付けていきます。このときに実現性はあまり考えなくて良いです。できるだけ理想の解決策を書き出すことが重要です。実現性はあとで考えます。その代わり、理想の解決策を実現するために必要な要素技術や要員、地域の事業者などを書いておきます。

発表用にまとめる

グループで検討した内容は最後にグループ発表を行いますので、発表用にまとめます。発表用の用紙には、以下のような項目を記載しておき、アイデアを出し合ったときの付箋紙をそのまま使って整理します。解決策を提供するのはだれか、解決策に必要な技術はなにかを同じように付箋紙に書き貼り付けます。

発表するアイデアは1つでも良いですし、複数でも良いですが、グループ内で「これ」というものを選んで発表します。

アイデア投票

グループ発表を行った後に、発表資料をテーブルに置いて、参加者全員で見てまわります。このときに他のグループの発表の内容に質問などあれば聞いてみます。参加者には投票シールを1人3票程度を持ってもらい、各グループから出されたアイデアのうちで「これは欲しい」というものに投票シールを貼ってもらいます。

クロージング

グループ発表と投票が終わったら、クロージングを行います。専門家などに講評を話してもらうと良いでしょう。また投票の結果を発表し、一番得票のあったアイデアは、そのアイデアを出したグループに改めて発表してもらっても良いでしょう。

温泉MaaSアイデアソンでは、MaaSの専門家が各アイデアについて講評を行いました。またアイデアソンを通して一番活躍していた人を表彰も行いました。個人の表彰は、アイデアの投票結果に限らず、アイデアソンの時間を通して積極的に意見を出したり、グループのアイデアをまとめたりした方を表彰することで、参加者に良い影響を与えると考えます。

以上がアイデアソンの進め方になります。


参考資料

温泉MaaSアイデアソンの進行用資料(Microsoft PowerPoint File)をこちらに公開しています。また長野県千曲市で開催した温泉MaaSアイデアソンの成果資料(Microsoft PowerPoint File)もこちらに公開しています。ぜひ参考にして、あなたの地域でもMaaSアイデアソンを開催してみてください。


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